「選べない時代」における販促とは

(執筆:PXC株式会社 クリエイティブユニット 髙田 靖彦)  

 

現代社会は「選択肢は多いが、選ぶことに負担を感じる状況」が増え、選択することにに消極的になっている「選べない時代」と言われています。

選択肢が多いほど人は自由になるはずなのに、実際には不自由さや不満を感じてしまうという逆説的な心理現象とされ「選択のパラドックス(The Paradox of Choice)」と呼ばれています。これはアメリカの心理学者バリー・シュワルツ(Barry Schwartz)が提唱し、2004年に出版した著書『The Paradox of Choice』で広く知られるようになりました。 

「選べない」が販促において起こる理由は、消費者の心理的負担や選択設計の不備によるものです。これは現代マーケティングや行動経済学でも重要なテーマで、「選択肢過多(choice overload)」や「意思決定疲れ(decision fatigue)」と呼ばれます。以下に、「なぜ選べないのか?」を解説します。

 

1. 選択肢が多すぎる

・商品バリエーションが多すぎて、違いが分かりにくい。
・類似商品が横並びで提示され、比較が難しい。
• オプション(色・サイズ・サービス)が複雑。

消費者は「失敗したくない」「間違いたくない」という心理が強まり、選ぶこと自体を避けてしまい購入機会の損失につながる。

  

2. 情報が多すぎる

・店頭POP、WEBサイト、SNS広告など、複数のチャネルで情報があふれている。
・商品説明が難解で、短時間で理解できない。

「簡単に決められない商品」は、 情報処理能力が限界に達し、消費者は選択を先送りするか、購入をやめてしまう。

 

3. 訴求ポイントが曖昧

・「どれが自分にとって良いのか」が分からない。
・比較対象がなく、決断の拠り所がない。

判断を他人やレビューに委ねたり、結局選ばなかったりする。
 

4. 決定疲れ

・消費者は日々多くの選択を迫られており、意思決定に疲れている。
・とくに夕方や月末など、判断力が低下する時間帯やタイミング。

「あとで買おう」「また今度」と、購買意欲があっても行動につながらない。

 

5. 「伝えすぎ」・「盛り込みすぎ」

・すべての特徴を盛り込もうとして、主張がぼやける。
・機能、価格、利便性、口コミ…全部アピールしてしまう。

「何が一番の魅力なのか」が伝わらず、選べない・響かない。

 

どうすれば「選べる」ようになるか?  

スーパーマーケットで次のような実験が行われました

選択肢が6種類のジャムを並べた売場
選択肢が24種類のジャムを並べた売場

興味を持って立ち寄った人数は24種類の方が多かったが、購入に至った割合は6種類の方が圧倒的に高かった

「多い方が目を引くが、少ない方が買いやすい」という結果になりました。どのような販促であれば「選ばれる」のかまとめてみました。

※コロンビア大学 アイエンガー教授とスタンフォード大学 リーパー教授と連名で発表したジャムの法則よりhttps://faculty.washington.edu/jdb/345/345%20Articles/Iyengar%20%26%20Lepper%20(2000).pdf

おわりに 

販促やビジネスにおいては「選ばせる設計」ではなく「選びやすくする設計」がますます重要になってきています。

前へ
次へ